「嘘ついても仕方ないじゃない。って、いうか、迷ってたの?街道1本道なのに?」
「笑わないで聞いて欲しいんだけどさ…実は…」
 アリューズは近道をしようとして森を突っ切ろうとしたことを話した。
そして、フィーアからカルガドを目指していたつもりが戻ってきてしまったらしいことも。
 リーシャは笑うを通り越して呆れてしまったらしく、眉間を抑えながら「はぁ」とため息をついた。
「あなたたちそれでよく旅なんかしてられるわね。方位磁針くらい持ってないの?」
「あ、そうか!」
「……。とにかく、もう日も暮れるし一度フィーアに戻った方がいいんじゃないの?それから、旅するならもっと基本的なことちゃんと勉強しときなさいよ」
「う〜ん。俺たちこれでももう2年は旅してるんだけどなぁ。ま、道に迷うことはあったけど今までも何とかなってきたし!」
 能天気に頭をかくアリューズ。
それを見て、リーシャの中で何かがが切れたらしい。
「ならなかったらどうするのよ〜!」
 口が早いか、手が早いか。リーシャは目にもとまらぬスピードでアリューズをどついた。美しいまでに見事なアッパーカットだ。
「うわ!?」
 放物線を描いてアリューズの体が宙を舞う。それを目で追いながらレティがリーシャにしみじみと言う。
「…お前、なかなか過激だな」
「女一人で旅してるんだもの。大人しくなんてしてられないじゃない」
「そういう問題か…?」
 涙目であごをさすりながらアリューズが起き上がる。
「いくらなんでもこのツッコミは激しすぎだろ!?」
「あなたたちみたいなのがいるから先輩冒険者に『近頃の若い者は』とかなめられるのよね。一緒にされたこっちの身にもなってほしいわ。冒険者稼業でなめられるってことがどれだけマイナスになるか、あなただってわかるでしょ?」
 すごい剣幕で言い立てられて、アリューズは思わずうなずいてしまう。
「それは、まぁ…」
「と、いうわけで私があなたたちに基本をみっちりと叩き込んであげるわ!さ、フィーアに行くわよ!」
 そういうとリーシャはアリューズをずるずると引っ張っていく。
「良かったな。クラゲ頭に知識をつけてくれるそうだぞ」
 情けない顔でひっぱられるアリューズにレティが真顔で言う。
と、アリューズが文句を言うより早く、リーシャがくるりと振り返り、レティの鼻先にびしっと指を突きつけた。
「私は『あなたたち』って言ったのよ?とーぜんレッターちゃんにも勉強してもらうからね!」
「レ、レッターちゃん??」
 いきなりだったからか、これにはさすがのレティもぽかんと口を開ける。
はじめてみる相棒の間抜け顔にアリューズの方が驚いた。
「へえ。お前でもそんな顔するんだ」
「う、うるさい!!」
 今度は赤くなっている。普段言い負かされているだけに、数少ない反撃のチャンスにアリューズの 目が輝いた。
「レッターちゃんかぁ。俺も今度からそう呼ぼうかな?な、レッターちゃん?」
「…うるさい」
 うつむいたままレティが言う。少し、様子がおかしい。
「遠慮するなよ、レッターちゃん。実は結構嬉しいんだろ?」
「やめろ…」
 アリューズがレッターというごとに、レティの顔が悲しげに歪む。
だが、調子付いたアリューズはそれに気づかない。
「うん。変な名前だと思ってたけど、呼んでみるとなかなかじゃないか、レッターちゃん」
「いい加減に…!」
「ストップ、アリューズ」
 不意に鋭い声が飛ぶ。
「え?」
「急がないと街に着くのが深夜になるわ。じゃれるのは後回しにして先を急ぎましょう」
「あ、ああ…。行こう、レティ」
 急に真顔になって言うリーシャに何か逆らいがたい雰囲気を感じたアリューズは、レティに声をかけると素直に街道を歩き始める。
それを見届けてからリーシャは小さな声でレティに言った。
「ごめん。私何か触れちゃいけないことに触れちゃったみたいね」
「…いや、大丈夫だ。こっちこそ気を使わせたようだ」
「大丈夫だって言うんなら、笑ってくれると助かるんだけど?」
 言われてレティは、気づかぬ間に自分がうっすらと涙を浮かべていたことに気づく。
「…すまない。少し目にゴミが入ってな」
「あら、そう?よく洗った方がいいわよ。水筒の水、貸そうか?」
 おどけた調子でリーシャが腰に下げた水筒を差し出す。
目にゴミだなんて言い訳だという事をわかっているだろうに…。レティは、そこで初めて顔を緩ませた。
「いや、いい。お前、面白いやつだな」
 レティの言葉にリーシャはただ黙って微笑んで見せた。そして思い出したように言う。
「あなたのこと、なんて呼べばいい?」
「…レティと呼んでくれ。レッターと呼ばれるのは、あまり好きではないんだ…」
「OK、レティちゃん。あ。ちゃんはつけても構わないかな?」
「好きにしてくれ」
 レティは苦笑した。ダメだといっても呼びそうな気がする。
「おーい。急ぐんじゃなかったのか?何やってるんだよ?」
 遠くから能天気なアリューズの声がした。
「お前の足が速すぎるんだ!女二人を置いていくとはどういうつもりだ!?」
 すっかりいつもの調子になったレティが、毒づきながら追いかける。
輝き始めた月にせかされながら、3人は町への道のりを急ぐのだった。



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☆あとがき☆

 いつになったらストーリーが進むのでしょうね?(聞くな)
私が書くと無駄に長くなる上に、こういうどーでもいい掛け合いが好きなんでなかなか話進まないと思います。っていうかこういうふうに少しずつ連載するの初めてなので毎回ストーリーを展開させることがなかなか出来ないんですよね。てっちゃんとかほんと尊敬しますよ。
しかも私続きを書きつつも前の部分手直しするという反則技してますから(おぃおい)。
実はそもそも何も考えてないんじゃないかって、本質を突いたツッコミはしちゃダメです(笑)。
う〜ん。人に発表できるようなものではないとはいえ、ただ書いてるだけってのも独り言いってるみたいでむなしいですねぇ…。どこかでこっそり明かそうかな…?

2002/07/28

☆あとがき補足☆
い、入れちゃったよ挿絵…(汗)
さつきさんのリクで描いたものだけど、このシーンのイメージで描いたんで、せっかくだから入れてみよう!と入れてみました。ど、どんなもんでしょうね??(滝汗)。

2002/10/26