アリューズが駆け寄るよりも早く、状況は動いた。
なにやら怒りの言葉を上げて男が女に掴みかかったのだ。
「!やめ…」
 制止の言葉をかけようとして、アリューズは絶句した。
掴みかかったと思った瞬間、男の体は宙に舞い、地面に叩きつけられたのだ。
目の前の思いがけない状況にアリューズはぽかんと口をあけて立ち尽くした。
 見れば、若いその女性は、不釣合いなほど大きな大剣を背負っており、余裕の笑みすら浮かべて男たちに対峙していた。
「女だからってなめてもらっても困るわね。私別に飾りや酔狂でこんなもの背負ってるわけじゃないんだけど?」
 セリフから察するに、どうやらさっきはこの女性が男を投げ飛ばしたようだ。構えているわけではないが、立ち姿も堂々としていて、隙がない。
「このアマ!!」
 残りの二人の男が、逆上して一斉に飛び掛る。
だが、少女はそれを難なくかわし、剣を抜くことなくねじふせた。
「くそっ!覚えてろ!」
「覚えてて欲しいなら、もうちょっと気のきいたセリフ残しなさいよ」
 なんの独創性もない捨て台詞を残しながら走り去っていく男たちの後ろ姿にからかいの声を投げると、少女はアリューズの方に向き直った。
「ごめんね、出番なくって」
 どうやらアリューズが駆け寄ってきていたことには気づいていたらしい。 「あ、いや…」
 アリューズといえば、まだ半分ぽかんとしたまま目の前の少女をみつめた。
透き通るような長い水色の髪に青い瞳。動きやすそうなジャケットの上にプロテクターをつけ、頭にはバンダナを巻いている。そして、背中には例の大剣。不釣合いなようで、意外と似合っている。しかもそれが格好だけではないことは先ほど証明済みだ。
「でも今時珍しいね。普通の人なら見ない振りして通り過ぎるのに」
 硬直したままのアリューズに気づいているのかいないのか、少女が話し掛けてくる。
その声でようやく我に返ったアリューズは、やっとまともに口を開くことが出来た。
「…そうなのか?普通ほっとけないものなんじゃないのか?」
「ふふ。ほんと変わってるわ。…私はリーシャ・フォルスバーン。あなたは?」
「あ…俺はアリューズ。アリューズ・シュトラ−ル。でも、なんだかすごく間抜けだよな、俺。助けるつもりが、君の活躍をぽかんと口開けて見てただけなんだからさ」
「だから必要ないと言ったろう?」
 苦笑するアリューズの耳に、聞きなれた声が飛び込んできた。
見ればレティがゆっくりとこちらへ歩いてくるところだった。
「レティ。こういう意味だったんなら、言ってくれれば良かっただろ?」
 アリューズは先ほど預けておいた剣を受け取りながら、抗議する。
が、抗議の視線はあっさり受け流され、変わりに冷たい視線をぶつけられる。
「聞く耳持たなかったのはそっちだろう。一応止めてやったものを」
「う…」
「…この子は?」
「え?ああ、こいつは俺の連れだよ」
 アリューズの言葉を聞いて、リーシャの瞳に少し不審の色が混じる
「こんな子供連れで旅してるの?見たところあなたの子供とも思えないし…誘拐とかじゃないでしょうね?」
「え!?いや、こいつは…お、俺の妹なんだ」
「妹?」
 どう見ても似ていないし、髪の色も瞳の色も違う2人をみてリーシャは怪訝そうな顔をする。
レティの方へと視線を向けてみると、
「そういうことらしいぞ」
 レティはいたって興味なさそうな口調でそう答えた。
「……。」
「いや、その、俺は母さん似でさ。こいつは父さん似なんだ」
「…だ、そうだ」
 再びレティがいかにもやる気なさそうにうなずく。
「…わかったわ。あなたたちが訳アリってことはね」
「え!?」
「別にそうならそう言えばいいのに。私他人のこと無駄に追求する趣味はないから。言いたくないなら、別に聞かない。ま、その様子じゃ誘拐とかって訳じゃなさそうだしね。えっと、私はリーシャっていうんだけど、あなたは?」
「………」
「こら、お前も挨拶くらいしろよ。…こいつはレッターっていうんだ。ヘンな名前だろ?俺はレティって呼んでる」
「レッター…?ずいぶんたいそうな名前を付けてもらったのね。確か古代語で”救い主”の意味でしょ?」
 リーシャの言葉にレティは微かに目を見開き、感心したような表情になる。
「よく知っているな」
「まあね。これでも色んな知識は身につけているつもりだから」
「すごいんだな。それにしても…レティが救い主??似合わないにも程がある」
 アリューズは思わず吹き出した。
かちん。その言葉にレティの顔色が変わる。
「こら、待て、リュー!!それは一体どういう意味だ!」
「やば!つい口が滑って本当のことを…」
「本当のことだと〜〜!?」
「あ、いや、その…」
 しどろもどろになるアリューズを見て、リーシャが吹きだした。
「ふふふ。仲がいいのね。ところであなたたちもフィーアへ行くんでしょ?せっかくだし一緒に行かない?」
「あ、いや俺たちはカルガドへ行こうと思ってたんだけど…」
 アリューズの言葉に、リーシャがぽかんと口を開ける。
「カルガドって…反対方向よ?」
「え!?嘘だろ!?」

 


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☆あとがき☆

今回も主人公立つ瀬なし!彼が活躍できる日はくるのか!?(殴!)
さて、ヒロイン登場です。青い(水色)髪は完璧私の趣味です(爆)。
現実にいたら怖いけど、アニメ絵ならOKということで♪
けど性格はまだ自分でも掴みきれてません(おぃ!)。
途中で微妙に変わっていっても気にしないでくださいね♪
あと、友龍の一番のお気に入りはレティなので途中でヒロインの座を取って代わられる可能性が…(殴!)
ちなみにヒロインっていっても、恋愛ネタは期待しないでください。そ−いうのは書くの苦手なので。

2002/07/26