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「いや、さすがにオイラ、略奪は…」
硬直から抜け出したアルトが気まずそうに答える。
「いえ、これは正当な奪還ですよ。太陽の聖剣はウォルヴィスのもの。取り返して国届ければ褒賞が、あるいはウォルヴィス貴族に接触して手柄になるといって高値で売りつけることも出来るでしょう」
 あくまでにこやかに答えるルードヴィヒに、アリューズが困惑気味に問いかける。
「どういうつもりだ…?」
「さぁ、どういうつもりなんでしょうね?…アルトさん、どうします?」
 さらりと答えると、ルードヴィヒは再びアルトに問いかける。
アルトはルードヴィヒの真意を確かめるように顔色を伺っていたが、やがてまたあのひとなつっこい笑みを浮かべるといった。
「はい、じゃあお願いします♪」
「ちょっとあなた!?」
 リーシャが気色ばむが、アルトは笑みを浮かべたままだ。
「確かにお受けしましたよ。さて、ではアリューズさん。お疲れのところ悪いのですが、お相手願えますか?抵抗はなさるのでしょう?」
「…ああ。でも武器が」
「太陽の聖剣で構いませんよ。私の剣も、少々特別でしてね」
 そういってルードヴィヒは剣を抜いた。
漆黒の刀身がその姿を現す。
太陽の聖剣とは対照的なその剣は、さながら闇そのもの。
「…マナスイの剣…お前、それを使いこなせるのか…」
 つぶやいたのは、レティだった。
レティの言葉を聴いてルードヴィヒが「おや」と意外そうな声を上げた。
「この剣のことを知っているのですか。この剣の前の持ち主ですら知らなかったというのに」
 何故か皮肉めいた笑みを浮かべながらルードヴィヒが言う。
「…ああ、よく知っている」
「そうですか。私もこの剣についての知識は持っていますからね。何も知らずに使おうとなどしませんよ…!」
 そういうとルードヴィヒは剣を振り上げる。
「アリューズ!」
 レティが叫んで聖剣を投げる。
アリューズはとっさに跳んでルードヴィヒの一撃を避けながら剣をキャッチする。
そして即座に追撃をかけてきたルードヴィヒの斬撃を、なんとか聖剣で受け止めた。
「ぐっ…!」
 受け止めた斬撃は予想以上に重く、アリューズが片膝をつく。
体制を崩したのを見てルードヴィヒは素早く剣を振り上げ、2撃目を放つ。
「なめるなぁっ!!」
 崩した体勢ながらもアリューズはすくい上げるような一撃を放ち、ルードヴィヒの剣をはじく。
 そして衝撃でわずかに体の浮いたルードヴィヒに体当たりをかけて突き飛ばすと、即座に体勢を整えた。
 この間、わずか数秒。
「全然見えない…」
 何が起きているのかと、救いを求めるような目でリーシャを見上げるフローラに、リーシャは首を横に振った。
「ごめんなさい。私にもよくはわからないわ」
 リーシャとて腕に覚えのあるほうではあるが、二人の戦いはその域を超えている。
そうしている間にも二人の攻防は続き、剣と剣のぶつかる音が辺りに響く。
『キィン!!』
 不意に、ひときわ大きな金属音が響いた。
見ればアリューズの持つ太陽の聖剣がはじかれ、宙を舞っている。
「アリューズ!!」
「くそっ!」
 すかさず繰り出される斬撃に剣を拾いに行くことも出来ず、アリューズが床を転がる。
「これで終わりです!」
 とどめの一撃をくりだすルードヴィヒ。
だがその一撃はアリューズに届かなかった。
「…ッ!」
 ルードヴィヒは剣を取り落とし、腕から血を流す。
その腕には金属片のようなものが突き刺さっていた。
アリューズは避けながらもリーシャが倒したキメラの残骸まで移動し、そのかけらを投げつけたのだ。
 そしてすかさずルードヴィヒの落とした黒剣を拾う。
「無駄です、あなたにその剣は使えませんよ」
 ルードヴィヒは腕から引き抜いたキメラの残骸を持ち替えるとアリューズの攻撃を受け止めようとする。
 次の瞬間、アリューズの振るった黒剣は、キメラのかけらをあっさりと切り裂いた。
「まさか…そんな…?」
 呆然とするルードヴィヒ。
アリューズの剣はルードヴィヒに届くほんの少し前で止められていた。
「俺の…勝ちだ」
「そのようですね…。まさかあなたにその剣が使えるとはね…」
 自嘲めいた笑みを浮かべるルードヴィヒ。
アリューズは剣を引くと、言った。
「どういうことか、説明してくれないか…?」




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☆あとがき☆
すごい戦闘シーンを書きたかったのに、異様に短いです(爆)
あ〜それにしても話が遅々として進まない(汗)
早く外伝に追いつかせたいのですが…。
次の更新も遅そうだな〜(^^;  

2003/07/04