(前略)

選択:『アビアノ基地に残る』


連邦軍・アビアノ基地
アイビス「タカクラチーフ、
 火器管制システムのチェックは
 終わりました」

ツグミ「ごめんなさいね、アイビス。
 調整を手伝ってもらって……」

アイビス「それは構いませんが……
 シルバーとゴールドって、
 あの二人用の機体だったんですね」

ツグミ「ええ……そして、
 プロジェクトTDの副産物でもあるわ」

アイビス「でも、
 アステリオンやカリオンにはない
 システムが色々あるようですけど……」

ツグミ「カザハラ所長の意向で
 組み込まれたものよ」
ツグミ「多分……今回の事態をある程度
 予測されていたのでしょうね」

アイビス「え?
 まさか、次の作戦で
 これを使うんですか?」

ツグミ「彼女はそのつもりよ。
 まだ起動テストもしていないのに……」

アイビス「チーフはあの子が
 戦うことに反対なんですね……」

ツグミ「当然よ。
 一国の王女である前に、
 あの子は只の子供なのよ……」
ツグミ「訓練も受けていないのに、
 戦場に出すなんて……」

アイビス「でも、あの子の気持ち、
 あたしにはわかります……」

ツグミ「え……?」

アイビス「自分の大切なものを
 守りたい、取り戻したいという
 気持ち……」
アイビス「その気持ちがある限り、
 いくら周りが止めても、あの子は
 戦うと思います……」
アイビス「タカクラチーフにも
 わかるんじゃありませんか……?」

ツグミ「……」

アイビス「だから、あたし……
 あの子に協力してあげたくて……」
アイビス「……」

ツグミ「……わかったわ、アイビス」

アイビス「え……」

ツグミ「戦う意思は本人のもの……。
 周囲が止められるものじゃない……」
ツグミ「それなら
 メカニックは最高の機体を
 用意するだけだわ」
ツグミ「それがパイロットを
 守ってあげる方法なんだもの」

アイビス「タカクラチーフ……」

ツグミ「そうと決まれば
 調整を急ぐわよ。
 手伝ってくれるわね、アイビス」

アイビス「はい!
 あたし、体力には自信ありますから!」

ツグミ「そう?
 じゃあ、力仕事もお願いね」


(中略)


カイ「……残りの者は先発隊となる。
 ただし、アイビス……」

アイビス「は、はい」

カイ「お前には機体の特性を生かし、
 我々が先に誘き出す敵を
 可能な限りかく乱してもらいたい」
カイ「……出来るか?」

アイビス「わかりました。
 ……やってみせます」


(中略)


シャイン「ライディ様……
 私はあなたに言われた通り、
 守るべき場所を守りたいのです……」

ライ「しかし、どうやって……」

シャイン「その術はあるのでございます」

ライ「術……?」

(ツグミ入室)

ツグミ「……そうです。
 今からそれについてご説明します」

ラーダ「タカクラチーフ……」

ツグミ「……モニターをお借りします」

テツヤ「こ、これは!?」

レオナ「もしやリオンシリーズ……!?」

ツグミ「はい。
 フェアリオン・タイプGと
 タイプS……」
ツグミ「リクセント公国からテスラ研へ
 依頼があり、開発された機体で……」
ツグミ「本来は式典用として使われる
 予定のものだったのですが……」

ラトゥーニ「でも、あの形は……」

アラド「ど、どう見ても女の子だよな」

リュウセイ「か、可愛い……」

イルム「……さては親父の仕業だな」

リュウセイ「で、でも、
 なんで2機セットなんだ?」

ツグミ「それは……脳波制御装置や
 W−I3NKシステムを
 搭載しているためです」

ラーダ「W−I3NKシステム……?」

ツグミ「はい。タイプGとタイプS……
 その2機の動きをシンクロさせるための
 システムです」

イルム「なるほど……読めたぞ」
イルム「タイプGはシャイン王女用……
 脳波制御装置は、彼女の予知能力を
 生かすためのものだ」
イルム「そして
 タイプSはラトゥーニ用……」

ラトゥーニ「え!?」

イルム「そのW−I3NKシステムとやらで
 タイプGをサポート……いや、
 コントロールしようってんだな」

ツグミ「そ、そうです。
 よくおわかりになりますね」

イルム「そりゃ、
 親父の考えることだからな」

ダイテツ「……シャイン王女、
 そのフェアリオンで我々の作戦に
 参加すると言われるのか?」

シャイン「は、はい……
 厚かましいお願いとは存じますが、
 どうか……」

アラド「け、けど、
 いくら何でも王女様を……」

シャイン「覚悟は出来ております。
 私に皆様のお手伝いを
 させて下さいませ」
シャイン「私を逃がしてくれた
 側近達や親衛隊……そして、民を
 助けるためにも……どうか……」

アイビス(シャイン王女……)

ラトゥーニ(王女も私と同じで……
 自分の大切な人を助けるために……)

ラトゥーニ「……」
ラトゥーニ「……私、
 フェアリオンに乗ります」

シャイン「……!」

リュウセイ「お、おい、ラトゥーニ……」

ラトゥーニ「危険なのはわかってる……。
 でも、王女の気持ちもわかるの……」

リュウセイ「で、でもよ」

ラトゥーニ「フェアリオン……
 そして、W−I3NKシステムが
 私達のために作られたものなら……」
ラトゥーニ「私は
 それを使いこなしてみせる……。
 シャイン王女を守ってみせる……」

シャイン「ラトゥーニ……」

ダイテツ「……」
ダイテツ「……タカクラチーフ、
 フェアリオンの防御面については?」

ツグミ「ハイパー・ジャマー・システムに
 Eフィールド発生装置……」
ツグミ「それに、機体の運動性、
 ラトゥーニ少尉の技量と
 シャイン王女の能力が加われば……」

ダイテツ「……良かろう。
 シャイン王女、御身の参加を認めよう」

テツヤ「か、艦長!?」


(中略)


アラド(敵の大将がアーチボルドなら
 ユウキ少尉とリルカーラ少尉も
 あそこにいるかも知れねえ……)
アラド(正直言って、あの人達とは
 やり合いたくねえけど……)
アラド(リクセント公国を
 取り戻すためには、
 戦わなくちゃならねえ……!)

イルム「それじゃ、
 早々に王女様の花道を作るとするか」

ラーダ「ええ、
 私達で敵を引きつけましょう」

ツグミ「アイビス、くれぐれも
 突っ込みすぎないように」

アイビス「了解……!」


(中略)


リュウセイ「しっかし、
 色んな意味でビックリしたな。
 このフェアリオンには」

アイビス「う、うん……。
 連携戦闘と回避能力に主点を置いた
 機体だってことは知ってたけど……」
アイビス「まさか、
 あんな動きをするなんて……」

リュウセイ「あれ、
 カザハラ所長とフィリオ少佐が
 考えたモーションなのかな?」

ツグミ「ま、まさか……」

イルム「案外、
 あの二人で踊って決めてたりして」

ツグミ(そ、想像したくない……。
 フィリオはともかく、
 所長のそんな姿は……)

アラド「それで、ラト。
 お前、こいつに乗るのか?」

ラトゥーニ「う、うん……。
 機体との相性もいいし、
 そのつもりだけど……」

アラド「だけど?」

ラトゥーニ「外見の方を
 もうちょっと何とか……」

ツグミ「嘘……。
 このデザインが気に入らないの……」

ラトゥーニ「え……?」

ツグミ「その服、そのリボン……。
 パイロットと機体の完璧な
 コーディネイトなんだけど……」

ラトゥーニ「コ、コーディネイト……?」

アイビス(そ、そう言えば、
 タカクラチーフの趣味って……)

イルム「外見ねえ。
 なら、装甲を変えなきゃならないな」

ツグミ「じゃあ……機体は重くなるし、
 可愛くなくなってしまうけど、
 ガーリオンの装甲を……」

リュウセイ「……俺は
 あれでいいと思うけどなあ」

ラトゥーニ「え?」

リュウセイ「とりあえず、
 機体性能の方に問題はないんだろ?」

ラトゥーニ「う、うん……」

リュウセイ「じゃあ、あれ……
 可愛いし、スカートはいてるし。
 ラトゥーニに似合ってると思うぜ」

ラトゥーニ「……」

アラド(スカート……関係あるのかな?)

ラトゥーニ「なら……あのままにする……」

ツグミ「良かった……。
 私も少尉に似合ってると思うわよ」

アイビス(や……やっぱり?)

リュウセイ「さて……そうと決まれば、
 早速写真を撮っとくとするか」

ツグミ「じゃあ、私が撮ってあげるわ。
 フェアリオンと一緒にね」

リュウセイ「お!いいねえ、それ!」

ラトゥーニ「……」

ツグミ「ほらほら、
 ラトゥーニ少尉も入りなさいな」

ラトゥーニ「え……?
 で、でも、リュウセイに悪いから……」

リュウセイ「なに言ってんだ。
 お前、こいつのパイロットだろ?
 一緒に撮ろうぜ」

ラトゥーニ「う、うん……」

アラド「じゃあ、おれも!」

イルム「こらこら、
 野暮を言うんじゃねえの」

アラド「え?あ……そ、そうッスね」

ツグミ「じゃあ二人共、撮るわよ」

リュウセイ「おう、頼むぜ」

ラトゥーニ「……」

イルム(親父の奴、
 あの外見はこれも見越してのことか?)
イルム(……いや、さすがに考えすぎか)