クスハ「ラングレー基地と
 連絡が取れなくなった……!?
 本当なんですか、所長!?」

ジョナサン「ああ……詳しい戦況は
 わからんが、東海岸方面は色々と
 大変なことになっているようだ」

クスハ「て、敵は
 それほどまでに強大なんですか?」

フィリオ「彼らは地球側の
 機動兵器を使っているそうだが、
 問題なのはその投入方法……」
フィリオ「空間転移装置を用い、
 戦力を送り込んでくるんだよ」

クスハ「……!」

ジョナサン「エアロゲイターが使っていた
 装置の解析が進んでいれば、何らかの
 手が打てたかも知れんが……」
ジョナサン「時すでに遅し、だな」

クスハ「それじゃ、ゴールドとシルバーを
 輸送機に積み込んでいるのは……?」

ジョナサン「ギリアム少佐から
 警告があってな。このテスラ研から
 避難させるためだ」

クスハ「警告……?」

ジョナサン「そうだ。異星人は新型機や
 試作機を狙って月のマオ社を襲撃……
 その後、占拠した」

クスハ「え、ええっ!?」

ジョナサン「……どうやら、
 連中はこちら側の技術に必要以上の
 興味を持っているらしい」

フィリオ「……」

クスハ「リ、リオやリョウト君、
 ラーダさん達は……?」

ジョナサン「彼らは最後まで社に
 残っていたが、脱出し……その後、
 ヒリュウ改に回収されたそうだ」

クスハ「そ、そうですか……良かった」

ジョナサン「だが、問題はここからだ。
 彼らがここにも現れる可能性は
 高い……」

(ツグミ入室)

ツグミ「失礼します。
 カザハラ所長、各機の搬入作業に
 関してご報告いたします」

ジョナサン「うむ」

ツグミ「ゴールド、
 シルバー、そしてαプロトは
 輸送機へ積み込みを終了しました」
ツグミ「後は
 参式の1号機から3号機ですが……
 作業に少々手間取っています」

ジョナサン「やむを得ん。
 テストモードで参式を起動させ、
 輸送機の中へ移動させよう」

ツグミ「わかりました。
 クスハ、お願いできる?」

クスハ「はい。起動準備をしてきます」

(クスハ退室)

ツグミ「……彼女が
 手伝ってくれるのでしたら、1時間で
 全作業が終了すると思います」

ジョナサン「うむ。グルンガストの
 扱いに関しては、この研究所じゃ
 あの子が一番だからな」

ツグミ「はい」

ジョナサン「だが……参式1号機の
 武装追加とαプロトの起動テストは
 間に合わなかったな」

ツグミ「ええ……
 他の機体と一緒に伊豆基地で
 一時保管してもらうしかありません」

ジョナサン「ああ。
 1号機のエンジン交換の件も含め、
 向こうにいるロバートに預けよう」

ツグミ「もちろん、それは無事に
 ここから脱出できれば……の話ですが」

フィリオ「……」

ジョナサン「ともかく、プロジェクトTDが
 休止されるのは残念だよ」

フィリオ「ですが、僕に
 それを悲しむ資格はありません……」

ジョナサン「フィリオ……」

フィリオ「……僕は……
 自らの意思で一度テスラ研を去り、
 DCに荷担した人間ですから……」

ジョナサン「……」

フィリオ「戦いが科学を発展させる
 ことはあっても、科学が戦いを
 導くことは許されない……」
フィリオ「そう常々おっしゃっていた
 カザハラ博士を裏切るような形で、
 僕はDCへ行き……」
フィリオ「リオンシリーズを設計し、
 DC戦争に荷担しました……」

ツグミ「フィリオ……」

フィリオ「僕は………」

ジョナサン「フィリオ、
 私はこうも言ってなかったか?」
ジョナサン「科学者に
 失敗は付き物だ……とな」

フィリオ「博士……」

ジョナサン「君のやったことの
 善悪の評価なぞ、他人に任せておけ」
ジョナサン「そして、
 君自身が負い目を持っているなら、
 それは今後の研究で取り返せばいい」

フィリオ「………」

ジョナサン「それでもまだ抵抗が
 あるかね?」

フィリオ「いえ……戦いの向こうには
 星の海が待っています」
フィリオ「そこへ飛び立つために
 人類は試練を乗り越えなければ
 なりません」
フィリオ「テレストリアル・ドリーム……
 プロジェクトTDのゴールが
 その向こうにあるのなら……」
フィリオ「僕も戦うつもりです」

ジョナサン「フッ……
 やはり、外の世界に出たことは
 君にとってプラスだったようだな」

フィリオ「はい……。
 いろいろなものに触れることが
 出来ましたし……」
フィリオ「彼女にも……
 ツグミにも出会えましたしね」

ツグミ「フィリオ……」

ジョナサン「おいおい、
 本命はそちらの方か?」

フィリオ「いえ、彼女と
 プロジェクトTD……そのどちらも
 僕にとっては大切な存在です」

ジョナサン「やれやれ、真面目に
 返されるとこっちが照れるよ」

フィリオ「?すみません……」

ジョナサン「とにかく、受取人が
 来るとは言え、状況が状況だ……」

ツグミ(受取人……?)

ジョナサン「すまんが、君達も
 搬出作業を手伝ってくれたまえ」

フィリオ「わかりました」


スタッフ「参式の積み込み、終了。
 ご苦労様です、クスハさん」

クスハ「いえ。
 それじゃ、シーリング作業の方を
 お願いします」

スタッフ「わかりました。
 クスハさんの方は引き続き弐式の
 起動準備に入ってください」

クスハ「え?でも、あれは……」

リシュウ「……おまえさんには
 輸送機と一緒に日本へ行ってもらう」

クスハ「リシュウ先生……!
 どういうことなんですか!?

リシュウ「道中は何かと危険じゃ。
 お前さんに輸送機の護衛を頼みたい」

クスハ「危険なのはここも同じです!
 私も研究所に残ります!」

リシュウ「輸送機の中身はこれからの
 戦いに必要な物ばかりじゃ。
 異星人に渡すわけにはいかん」

クスハ「で、でも……」

リシュウ「なに、心配はいらん。
 所長達にはワシがついておる」
リシュウ「じゃから、後のことは
 お前やワシの弟子達に任せるぞ」
リシュウ「L5戦役の時と同じく、
 ブリット達と共にこの星を
 異星人から守ってくれ」

クスハ「……」

リシュウ「それがお前たちの使命じゃ。
 よいな?」

クスハ「……は、はい」

スレイ「……何度言えばわかる!
 RaM系のマニューバーは
 お前では無理だ」

アイビス「そんなこと……
 やってみなければ
 わからないよ……!」

リシュウ「……む?何じゃ?」

クスハ「あれは
 スレイさんとアイビスさん……」

スレイ「急加速突撃……
 ラピッド・アクセラレーション・
 モビリティ・ブレイク……」
スレイ「ブースト・ドライブを
 使いこなせないお前では
 相手の標的になりに行くだけだ」

アイビス「あと少し……あと少しで
 あたしだって出来るよ」
アイビス「だから、こうして頭を
 下げて練習に付き合ってくれと
 頼んでるんじゃないか……!」

スレイ「そんな義理は私にはない」

アイビス「スレイ……!」

スレイ「言っておくぞ、アイビス。
 プロジェクトTDの正パイロットは
 私だ」
スレイ「お前はその補欠に過ぎない。
 私の邪魔になるような真似はするな」

アイビス「………」

リシュウ「やれやれ……
 相変わらずじゃのう、あの二人は」

クスハ「と、止めなきゃ……!」

リシュウ「放っておけ。
 若い内にはよくあることじゃ」

クスハ「で、でも……!」

スレイ「……所詮、『流星』では
 星の海を往くことは出来ん」

アイビス「スレイ……あんた!!」

ツグミ「そこまでです、アイビス。
 メンバー間での過度のトラブルは
 見逃せません」

アイビス「タカクラチーフ……!」

クスハ「アイビスさん、
 落ち着いてください。今は仲間同士で
 言い争っている場合じゃ……」

アイビス「……わ、わかったよ……」

スレイ「フ……当然の裁きだな」

フィリオ「だけど、スレイ………
 その前の挑戦的な言い方は
 良くないね」

スレイ「……これは
 パイロット同士の問題だ。
 少佐は口を出さないでもらいたい」

フィリオ「いや……
 今のは言葉遣いの問題だ。
 兄として見逃すわけにはいかないよ」

スレイ「ぐ……」

フィリオ「さあ、スレイ。
 アイビスに謝るんだ。
 君達は仲間なんだからね」

スレイ「………」

フィリオ「どうしたんだい、スレイ?
 最近、イライラしているみたいだよ」
フィリオ「困ったことがあるなら
 僕に話してごらんよ」

スレイ「……私はTDのパイロットで
 あなたはその責任者だ!
 今は兄妹ではない!!」
スレイ「言葉遣いやプライベートにまで
 口を出される筋はない!」

アイビス「スレイ……」

スレイ「忘れるな、『流星』!
 ナンバー01は、この私……
 スレイ・プレスティだ!」

(スレイ去る)

クスハ「ス、スレイさん……」

リシュウ「……ふむ。フィリオが
 間に入ったのは逆効果じゃったのう」
フィリオ「……あれでも昔は
 『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って
 僕の後を離れなかったんですが……」

リシュウ「彼女とて、いつまでも
 子供ではない。お前さんの優しさは
 わかるが、過保護はいかんぞ」

フィリオ「……」

アイビス「……」

ツグミ「アイビス……
 すぐに感情に走るようでは
 アストロノーツは務まりませんよ」

アイビス「……わかってる……」

フィリオ「ところで、アイビス……
 スレイの言っていた『流星』って
 何のことだい?」

アイビス「………」

ツグミ「パイロット達の間での
 あだ名です」

フィリオ「そうか……随分と
 ロマンチックな名前をもらったね」

ツグミ「いえ、『流星』というのは
 被弾率の高いアイビスが撃墜される
 様を皮肉ったものです」

アイビス「……」

クスハ「あ、あの……アイビスさん。
 気にしない方がいいと思います」

リシュウ「そうじゃ。
 そのまんまズバリの名前の奴も
 おるからのう」

クスハ(リュウセイ君が聞いたら
 怒り出しそうだけど……)

アイビス「……」

クスハ「アイビスさんは
 高速機動や長距離航行でいい結果を
 出しているじゃないですか」
クスハ「だから、自信を持って下さい」

アイビス「ありがとう、クスハ……。
 でも、それだけじゃ駄目なんだ……」
アイビス「星の海を往くためには……」

フィリオ「………」

(警報)

ツグミ「!?」

リシュウ「まさか、奴らか!?」


第17話『テスラ研脱出』


リシュウ「何事じゃ、ジョナサン!?」

ジョナサン「先生、
 インスペクターが現れました!」

リシュウ「ぬぅっ……やはり、そうか!」

ジョナサン「ツグミ君、輸送機の発進を
 急がせてくれたまえ!」
ジョナサン「それから、
 スレイ君とクスハ君に敵機の迎撃を!」

ツグミ「は、はい!」

(敵出現、スレイ発進)

スレイ「01、STOL発進!」

(クスハ発進)

クスハ「グルンガスト弐式、行きます!」

アイビス「タカクラチーフ!
 どうしてあたしは待機なの!?」

ツグミ「フィリオ少佐の指示です」

アイビス「でも、
 相手は異星人なんでしょ!?
 少しでも戦力があった方が……!」

ツグミ「わからないのですか?
 だからこそ、少佐はあなたに
 待機を命じたです……!」

アイビス「え……」

ツグミ「今、あなたが出撃しても
 死にに行くようなものです」
ツグミ「わかったら、
 格納庫で待機していなさい……!」

アイビス「………」

ジョナサン「スレイ君、クスハ君!
 すまんが、輸送機発進までの
 時間を稼いでくれ!」

クスハ「はいっ!」

スレイ「……クスハ、
 私は好きにやらせてもらうぞ」

クスハ「わ、わかりました」

スレイ(初の実戦……。
 だが、弐式の手を借りずとも
 やってみせる!)


リシュウ「あの連中、
 スレイ達を研究所から
 引き離すつもりか……!?」

フィリオ「ええ、おそらく……」

ジョナサン「ツグミ君、
 輸送機発進までの時間は?」

ツグミ「あと5分ほどです!」

 ジョナサン(頼む、二人共。
 もう少し持ちこたえてくれ……!)


スレイ「終わったか……。
 他愛のない相手だったな」

クスハ「早く研究所に戻りましょう、
 スレイさん。もうすぐ輸送機が
 発進する頃です」

スレイ「ああ、了解だ」

ジョナサン(何とか
 間に合ったか……?)

ツグミ「カ、カザハラ所長!!」

ジョナサン「どうした!?」

ツグミ「研究所の前方に
 転移反応が!!」

ジョナサン「!!」

(インスペクター登場)

リシュウ「何じゃ、あれは!?」

クスハ「か、怪獣!?」

フィリオ「あ、あの機体は
 ギリアム少佐が言っていた……」

ジョナサン「インスペクターの
 指揮官機……!やはり
 本命を送り込んできたか!」

ヴィガジ「……フン、
 目先のエサにつられるのは
 地球人の特性だと言えるな」
ヴィガジ「おかげで労せずに
 テスラ・ライヒ研究所が
 手に入るというものだ」

(ヴィガジ、研究所に一直線)

ツグミ「ああっ!!」

クスハ「テ、テスラ研が!!」

スレイ「くっ!私が行く!!」

ヴィガジ「うるさいハエ共め、
 これでもくらえ!」

スレイ「!!」

(スレイ、ヴィガジの攻撃受ける)

スレイ「くあっ!!」

(続いてクスハも)

クスハ「きゃあああっ!!」

ツグミ「スレイ!クスハ!!」

スレイ「あ……あの位置から
 当ててきた!?」

ヴィガジ「貴様らは
 そこで大人しくしていろ。
 ……命が惜しければな」

クスハ「う、ああっ……!」

ツグミ「あれでは二人の機体が!」

スレイ「くっ、落ちてなるものか!
 テスラ研には兄様がいる!!」
スレイ「翼が折れようと飛ぶんだ!!
 兄様を守るために!!」

???「……その役目は
 私に任せてもらおう」

スレイ「何!?誰だ!?」

(レーツェル登場)

スレイ「黒いヒュッケバイン!?」

クスハ「あ、あれは!?」

ヴィガジ「何者かは知らんが、
 俺の邪魔はさせんぞ!」

???「フッ……それはどうかな」

(ヴィガジに取り付くレーツェル)

ヴィガジ「むうっ!?」

スレイ「は、速い!」

???「行くぞ、トロンベ!」

(レーツェルとヴィガジ、戦闘)

ヴィガジ「チッ、味な真似を!!」

クスハ「黒い機体……!
 それにトロンベって!?」

スレイ「やはり、あの男は……!」

???「………」

ヴィガジ「貴様、何者だ?」

レーツェル「私の名前は
 レーツェル・ファインシュメッカー。
 そう覚えていただこう」

ヴィガジ「『謎』?『食通』だと?
 翻訳機が壊れているのか?」

クスハ「ま、間違いない!
 あの人はエルザ……」

レーツェル「……今の私は
 レーツェル・ファインシュメッカーだ。
 それ以上でも以下でもない」

クスハ「え?ええっ!?」

ジョナサン(あれじゃ、バレバレだな。
 だが……間に合ってくれたか)

フィリオ「……ありがとう、食通さん」

レーツェル「フッ……久しぶりだな、
 フィリオ・プレスティ」

フィリオ「ああ。
 こんな所で君に会えるとは
 思ってもみなかったよ」

レーツェル「友よ、再会の挨拶は
 この危機を乗り越えてからにしよう」

(敵増援)

クスハ「ああっ!研究所が!!」

ツグミ「か、囲まれた!?」

フィリオ「タカクラチーフ、
 今の内に輸送機を発進させるんだ」

ツグミ「え……!?
 でも、あなたやカザハラ所長は……」

ジョナサン「我々はここに残る」

ツグミ「しかし、それでは!」

ジョナサン「所員達のこともある。
 私だけ逃げるわけにはいかんさ」

リシュウ「そうじゃ。連中の目的が
 この研究所のデータと成果物なら、
 ワシらの命まで取りはすまい」

フィリオ「だから、
 君はここから脱出するんだ。
 僕達の翼と共に……」

ツグミ「フィ、フィリオ……!」

スレイ「兄様!一緒に逃げましょう!
 データよりも兄様の命の方が……!」

フィリオ「スレイ……
 テスラ研には多くの科学者達の
 英知が刻み込まれている」
フィリオ「それを
 失うことだけは何としても
 避けなければならないんだよ」

スレイ「に、兄様……!」

ツグミ「………」

ジョナサン「後のことは
 我々が何とかする。
 さあ、早く行きたまえ」

ツグミ「わ……わかりました」

ジョナサン「レーツェル、参式の2号機は
 確実に彼へ渡してくれ」

リシュウ「そう……
 ワシが作った新型の斬艦刀と共にな」

レーツェル「……承知した」

フィリオ「食通さん……
 僕の妹達と星への翼を頼むよ」

レーツェル「心得た、友よ。
 そして、私は必ずここへ戻ってくる。
 お前達を救い出すために」

フィリオ「ありがとう……エル。
 その時まで、ビアン博士の遺産は
 預かっておくよ」

(輸送機発進)

スレイ「タカクラチーフ!
 何故、輸送機を発進させた!?」

ツグミ「……それが
 少佐の意思だからです……」

スレイ「な……に!?」

クスハ(やっぱり、所長達は……!)

ツグミ「アイビス……我々の使命は
 このタウゼントフェスラーを
 敵包囲網から離脱させることです」

アイビス「わかっている……!
 やってみせるさ!」

スレイ「戻れ、アイビス!!
 貴様、兄様を見捨てる気か!?」

アイビス「スレイ……!今は……
 今はこうするしかないんだよ!」
アイビス「こうするしか!」

スレイ「く………」

クスハ「スレイさん、
 フィリオさんや先生の気持ちを
 わかってあげて下さい……!」

クスハ「あの人達は
 私達や研究所のみんな……いえ、
 もっと多くの人達のために……!」

スレイ「……!」

レーツェル「……行くぞ。
 脱出ルートはこちらだ」

アイビス「その方向は…!?」

クスハ「て、敵の指揮官機がいる方へ
 行くんですか!?」

レーツェル「その通り。
 確かにあの機体は難物だが、逆に
 今のルートを守るのは奴だけだ」

ツグミ「つまり、
 誰かがあれの相手をすれば、
 脱出できると……!?」

レーツェル「そうだ。
 その役目は私が引き受けよう」

スレイ「勝手なことを言うな!
 お前のような男に任せておけるか!」

レーツェル「フッ……その意気は良し」
レーツェル「だが、
 君の兄上の夢を壊したくなくば、
 私の指示に従っていただこう」

スレイ「……」

ヴィガジ「フン、
 こちらへ、向かってくる気か?」

ツグミ「作戦内容を確認します。
 最優先事項はタウゼントフェスラーの
 離脱……」
ツグミ「敵指揮官機は
 レーツェルさんに任せ、各機は
 こちらの護衛をお願いします」

クスハ「はいっ!」

フィリオ(頼んだよ、ツグミ……)

ツグミ(フィリオ……)

レーツェル「では、行くぞ!!」

ヴィガジ「いい度胸だ……!
 この俺が直々に相手をしてやる!」


アイビス戦闘前台詞:
アイビス「やるんだ……!
 今、あたしに出来ることは
 戦うことだけなんだ……!」

ヴィガジとレーツェル戦闘:
ヴィガジ「メキボスが言っていた
 ヒュッケバインの新型か……」
ヴィガジ「ならば、貴様の命ごと
 その機体をもらい受けるぞ!」
レーツェル「悪いが、
 その申し出は断らせていただく!」


ツグミ「進路クリア!
 このまま一気に行けます!」

レーツェル「よし、
 各機は私に続いて全速離脱!」

クスハ「は、はいっ!」

クスハ(リシュウ先生、
 カザハラ所長、フィリオさん……
 どうかご無事で……!)

(レーツェル、クスハ離脱)

スレイ「兄様……
 必ず……必ず救い出します……!」

(スレイ離脱)

アイビス「フィリオ……
 あたし……頑張る……。
 もっと……もっと頑張るよ……!」

(アイビス離脱)
ヴィガジ「チッ、逃がしたか……」
ヴィガジ「まあいい、
 俺の任務はあの研究所の制圧だ。
 後はアギーハに任せるとしよう」

(ヴィガジ研究所へ)

リシュウ「……来おったか。
 じゃが、ワシらの目的の半分は
 達成したわい」

フィリオ「ええ……彼らが無事に
 アメリカから脱出してくれることを
 祈りましょう……」

ジョナサン「すまんな、フィリオ。
 君にまで貧乏クジを引かせて」

フィリオ「……言ったはずです。
 僕も地球の未来のために戦う覚悟は
 出来ていると……」

ジョナサン「フッ、そうだったな」

ジョナサン「さて……
 それじゃ、インスペクターの指揮官を
 丁重に出迎えるとするか」


ヴィガジ「フン……
 めぼしい機体は全てあの連中に
 持っていかれたか」
ヴィガジ「残っている機体は
 このリストにある通りなのだろうな?
 ジョナサン・カザハラ」

ジョナサン「ああ」

ヴィガジ「……」

リシュウ「ワシらを信じられぬのなら、
 研究所内をくまなく探すがいい」

ヴィガジ「言われなくてもやっている」

ジョナサン「……ところで、所員の命は
 保証してもらえるんだろうな?」

ヴィガジ「それはお前達の態度次第だ」

ジョナサン「わかった。
 ……で、君達は僕達に
 何をさせるつもりなのだ?」

ヴィガジ「ここのデータを全てまとめ、
 我々に提出しろ」

ジョナサン「テスラ研の
 データ量は膨大でね。その作業には
 かなりの時間がかかるよ」

フィリオ「最低でも
 2週間は欲しい所だね」

ヴィガジ「フン……
 時間稼ぎなどさせんぞ」

ジョナサン「なら、君達の手で
 データを持っていくがいい」
ジョナサン「ただし、
 ここのセキュリティシステムは
 特殊でね……」
ジョナサン「BLDコードを持たぬ者が
 データをいじれば、消去されるように
 なっている」

ヴィガジ「何だと……?」

ジョナサン「簡単に言えば……
 研究担当者の身に何かあれば、
 データが消えるってことさ」

リシュウ(おいおい、ジョナサン……
 そんなシステムがあったのか?
 ワシは聞いとらんぞ)

ジョナサン(ブラフですよ、先生)

リシュウ(馬鹿言え、
 連中にそんなものが通用するとは……)

ヴィガジ「期限は2週間だ。
 期限を過ぎた場合は、所員を
 1日につき5人ずつ処刑する」

ジョナサン「……努力するよ」

リシュウ(むう……。
 言うてみるもんじゃのう……)

ヴィガジ「では、すぐに作業を始めろ」

(ヴィガジ出て行く)

ジョナサン(2週間か……)
ジョナサン(連中が地下のダブルGを
 見つけるのが早いか、助けが
 来るのが早いか……賭けだな)


輸送機・機内
ツグミ「……駄目です。
 付近の連邦軍基地からの応答は
 ありません……」

レーツェル「そうか……。
 アメリカ中部もインスペクターに
 制圧されつつあるようだな」

ツグミ「彼らは地球側の兵器を
 使っているようでしたが……」

レーツェル「制圧した勢力の
 兵器をそのまま自軍戦力として
 使用する……」
レーツェル「補給線の維持と戦線拡大を
 両立させる手段だ」
レーツェル「また、都市部に大規模な
 攻撃を仕掛けていないことから
 判断すれば……」
レーツェル「彼らは
 我々の軍事力だけでなく、生産力も
 手に入れるつもりだと思われる」

ツグミ「と言うことは……?」

レーツェル「彼らは、自分達が
 後々利用しようと思っているものに
 対し、必要以上の手を出さない」
レーツェル「そして……
 それはテスラ研も例外ではない」

ツグミ「……」
ツグミ「これから、
 私達はどうするんです?」

レーツェル「インスペクターは
 西海岸方面へ勢力を伸ばそうと
 している」
レーツェル「故に、
 太平洋方面へ抜けるのは危険だ。
 我々はこのまま北へ向かう」

ツグミ「でも、
 そちらへ行っても同じことに……」

レーツェル「いや、ヒリュウ改が
 スペリオル湖上空へ降下してくる
 手はずになっている」

クスハ「!
 ヒリュウが来てくれるんですか!?」

レーツェル「そうだ。
 私はカザハラ所長の依頼で
 新型機や試作機を受け取り……」
レーツェル「ギリアムの頼みで君達を
 ヒリュウ改ヘ導くために来たのだ」

クスハ「あ、あの、レーツェルさん。
 ギリアム少佐をご存知だと
 いうことは……」
クスハ「やっぱり、
 あなたはライ少尉の……」

レーツェル「他人の空似だ。
 私はライディースの兄などではない」

クスハ「え?兄って……」

ツグミ(クスハは
 そんなことを言っていないのに……)

レーツェル「ところで、
 カリオンのパイロット達は
 どうしている?」

ツグミ「二人は休息をとっています。
 実戦経験の少ない彼女達に先程の
 戦闘は過酷だったようで……」

レーツェル「…………」


スレイ(兄様……)
スレイ(兄様は夢に……
 プロジェクトTDに
 全てを懸けてきた……)
スレイ(その兄様が
 戦いの犠牲になるなんて……)

(ツグミ来る)

ツグミ「ここにいたのね、スレイ」

スレイ「タカクラチーフか……」

ツグミ「この後、我々は
 連邦軍の戦艦ヒリュウ改と
 合流することになったわ」

スレイ「彼らと協力して
 テスラ研を奪回するのか…?」

ツグミ「いえ……
 大西洋を渡り、南欧のアビアノ基地へ
 向かうことになるわ」

スレイ「ならば兄様はどうなる!?
 敵の手にかかるのを黙って
 見ていろと言うのか!?」

ツグミ「………」

スレイ「タカクラチーフ!
 お前はテスラ研を脱出する時も
 ためらいがなかった……!」
スレイ「お前は兄様を欠いたままで
 プロジェクトTDが完遂出来ると
 思っているのか!?」

ツグミ「………」

スレイ「答えろ!」

ツグミ「あの場で
 出来る最良の選択をしたまでです……
 そうとしか答えられません……」

スレイ「貴様……!」

ツグミ「落ち着いて、スレイ。
 この機にはフィリオ少佐の
 努力の結晶……」
ツグミ「言い換えれば、
 プロジェクトTDの成果が
 積まれているのよ」
ツグミ「それを守るのも
 私達の務めじゃなくて?」

スレイ「フン……新型のグルンガストと
 金持ちの道楽で作った機体のどこが
 プロジェクトTDの結晶だ!?」

ツグミ「……それだけじゃないわ。
 この輸送機にはαプロトも
 積み込まれている……」

スレイ「何っ……!?
 既に完成していたのか!?」

ツグミ「………」

スレイ「今すぐ見せてもらうぞ。
 プロジェクトTDのフラッグシップを」

ツグミ「待って、スレイ。
 αプロトは………」

スレイ「αプロトは
 ナンバー1である私の乗機だ」
スレイ「パイロットとして
 自分の機体を確認させてもらう!」

ツグミ「ま、待って!」

(覆いを取る)

スレイ「!
 これは……この機体色は……!?」

ツグミ「………」

スレイ「応えろ、ツグミ!
 何故αプロトが……アステリオンが
 白銀に塗られている!?」

ツグミ「……それがフィリオの意思よ」

スレイ「馬鹿な……!
 そんな馬鹿なことが
 あってたまるものか!」

ツグミ「アステリオンのパイロットは
 アイビス……」
ツグミ「これはフィリオ少佐が
 決めたことです……」

スレイ「アイビスが……
 あの『流星』が……私を差し置いて
 アステリオンのパイロットだと……」

ツグミ「聞いて、スレイ……」

スレイ「く……!」

(スレイ走り去る)

ツグミ「スレイ……」

レーツェル「……やはり、
 彼女には受け入れられなかったか」

ツグミ「レーツェルさん……」

レーツェル「フィリオから
 シリーズ77の話は聞いていた」
レーツェル「そして、
 そのパイロットに選ばれるべき
 人物のことも」

ツグミ「教えて下さい……。
 何故、フィリオはスレイではなく
 アイビスを選んだのです?」

レーツェル「……君も彼の人選に
 納得がいっていないようだな?」

ツグミ「当然です。
 二人の操縦技術には格段の開きが
 あるのですよ……」

レーツェル「だが、
 アイビスは我が友が選んだ人物だ。
 私は彼女に秘められた才能を信じる」

ツグミ「しかし……」

レーツェル「ならば、
 君自身の目でそれを見極めるのだな」

ツグミ「……」


アイビス(フィリオ……
 これからどうなっちゃうのかな……、
 あたし達……)
アイビス(このまま戦いが続いたら
 プロジェクトTDは……)

(警報)

アイビス「敵襲……!?」

(回線開く)

ツグミ「アイビス、起きてる!?」

アイビス「は、はい!
 敵ですか、タカクラチーフ!?」

ツグミ「……スレイが
 カリオンで無断出撃しました」

アイビス「え……」

ツグミ「いかなる理由があろうと、
 この状況での単独行動は
 許されません」
ツグミ「あなたは
 直ちにスレイを追って下さい」

アイビス「りょ、了解です!
 で、でも……」

ツグミ「私達もすぐに向かいます。
 あなたはスレイの足止めに
 専念してください」

アイビス(スレイ……
 何があったの……?)
アイビス(フィリオがいない今こそ、
 あたし達が頑張らなきゃ
 ならないっていうのに……)