エピローグ

 荒野が広がる…どこまでも。
アルグレーン軍、王都、そしてカルメリア軍を飲み込んで。
黒き魔女はそこでただ一人、シャルレィスの骸を抱えながら座り込んでいた。
遠くから、砂煙を巻き上げながら馬が駆けてくるが、ただ見るだけで、認識にまで至らない。魔女の目は、もう何を見ても何も写さない。
「お前は…!黒き魔女!やはりこれはお前がやったのか!?」
 魔女の姿を認めて、馬を止めると男が魔女に駆け寄る。
だが、魔女は動かず言葉一つ発しない。
「おい、何か言え…!」
 肩をつかもうとして、男は魔女が抱えていたものに気づく。
「…!?シャルレィス将軍!?お前、まさか…!」
 頭の中を走った考えに、男は激昂して剣を抜く。
だがしかし、ゆっくりと振り返った魔女の顔を見て、その動きを止めた。
「お前…泣いてる、のか…?」
「馬鹿な奴だな…シャルレィスは…。私の力を使えばこんなに簡単だったのに。なのに理解不能な命令ばかりして、結果がこれだ。本当に、馬鹿だ…」
 涙を流しながらつぶやく魔女に、男は言葉をなくす。
「なんとか言ってくれ、クルセイド。こいつは…大馬鹿だろう?」
「…ああ、そうだな…。…帰ろう。将軍を叱りたい奴は、お前のほかにもいっぱいいるんだ…」
 クルセイドは抜いた剣を鞘に戻し、魔女の肩をそっと叩いた…。


「悪いな、お前はここに封印することになったよ。最も表向きはもう黒き魔女も剣も存在しないことになってるけどな。あの爆発はアルグレーンが魔女の力を使おうとして暴走、魔女とともに自滅したことになってる。まぁ、そうしないと色々問題があるからな…」
 クルセイドが魔女に語りかける。
城の地下、極秘に作られた地下室に、二人はいた。
魔女は耳から入ってくるクルセイドの言葉をただ音として聞いていた。
もう何もかもどうでもいい。
私は道具だ。何も感じない。
感じたくなんかない。
…こんな苦しい思いは、もう嫌だ…!
「俺は、シャルレィス将軍がお前を普通の人間として扱っているのを正直納得いっていなかったんだ。でも、今ならわかるよ。お前は彼女のために泣いてくれた。だから…次にお前の封印がとかれることがあったら…戦乱の世じゃないことを、祈ってる」
 そういってクルセイドは魔女の剣をその本来の鞘に収めた。
それと同時に魔女は剣の力を失い、深い眠りにつく。
クルセイドは魔女を抱えて部屋の中央の棺に納めると、そのふたを閉じた。
 そして、剣を脇の台座に置いた。
「それじゃあな」
 一言残し、クルセイドは部屋を出た。
重々しい扉が閉まり、唯一明かり取りの窓から入ってくる太陽の光が鞘の装飾に反射して煌く。
 魔女は眠り続ける。
カルメリアの…いや、アルグレーンを併合して今はウォルヴィスと名を変えた国の王城の地下で。
長い、長い年月を、ずっと。
一人の赤毛の少年がこの部屋を訪れるその日まで。
皮肉にもその時代はクルセイドが祈ったような平和な時代ではなく、激しい戦いの世であるのだが…。



  to be continued 『外伝3』... 




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☆あとがき☆
はい、外伝2最終回です。
実は外伝2はこのエピローグのあたりが最初に出来てました。
もっとも最初はシャルレィスさんの存在すらなかったんですけどね(笑)
彼女は書いてるうちになんだか存在が大きくなっていったキャラです。
本編のキャラより気に入ってるかも(爆)
でも実は黒き魔女が一番のお気に入りだったりする(笑)
 けど今回結構ネタバレになっちゃったかな…?
まぁ私のはありがちキャラにありがちストーリだからどうせ先なんか読めるだろうし、ま、いっか♪(おぃこら)


2003/07/04